公開日:2017年7月26日
株式会社D.DiRECT 代表取締役 青木 洋光さん
『地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減』
著者:増田寛也私は平成22年に小田原市で医療・福祉の事業者を対象とした地域密着型のコンサルティング事業を立ち上げました。創業してから5年間黒字で売上も拡大基調であったものの、この状況がいつまで続くのかという不安を抱いていました。
小田原市や周辺の地域がこれからどうなっていくのかという漠然とした問題意識を持っているなか、何気なく立ち寄った本屋で「地方消滅」というタイトルを目にしました。“人口が減っていくことをどう捉えているか”という強烈な関心を持って本を手にしたことを覚えています。
本では“どのくらい人口が減っていくのか”ということについて、データを元に専門家の見地から述べられており、その中でも消滅都市のランキングで小田原市周辺エリアの10の自治体のうち、4つ(神奈川県西4町)がランクインしていることに驚かされました。この本を読んだことで、地域活性につながる新たな事業展開をしなくてはならないという強い危機感に駆り立てられました。
これをきっかけに、立地適正化計画(地域活性や建物の立地適正を目的として自治体が国に提出する中長期での計画)など、地域の動きをしっかりと理解した上での事業アプローチを意図的に行うようになりました。例を挙げると、“街中でも子育てがし易い環境づくり”という事業モデル(通勤時間・医療サポート・経済的支援)の構築に今年は力を入れています。
事業構築の一環として29年3月、小田原駅徒歩4分の場所に「ヘルスケアタワー小田原」と名付けた複合型医療機能を持つ自社ビルをオープンしました。“駅前子育てゾーン”として、小児科の誘致に加え、調剤薬局と複合した子供向け商品の販売コーナーを設けています。
さらに29年の秋、小田原駅から徒歩圏内に本社ビルを移転する地元のIT上場企業と連携して、カフェ併設型の企業主導型保育事業「バンビーノハウス」をスタートする予定です。ここでは“子供を連れて出社できる”ことをコンセプトとしています(自社の社員を含む近隣企業の育児休暇終了社員など)。
この本を読んでいなければ、地域活性に対する強い危機感を持つことなく、地域の実態もわからず、現在のようなスピード感ある事業の展開はしていなかったでしょう。都会での活躍を夢見る若者が多い中、地方の良さを地元目線で見つめ直すことで地元No.1企業を目指し、地元に優秀な人材が留まり、さらに流入させていく事が都市間競争に貢献できる事と考えます。“本業を通して地域に貢献できる”という新しい視点を持つきっかけとなったこの本との出会いに感謝しています。
起業家プロフィール
株式会社D.DiRECT 代表取締役 青木 洋光
神奈川県内の中堅ゼネコンで約20年間企画・デザイン・企業運営の業務に携わり多くの実績を積む。
2002年より株式会社D.DIRECTを設立。
独学で医療機関の開業支援を学び、専門家からの助言や市場調査・企画・運営・サポートを経て自分のスタイルを確立した。
「人は財産であり、物に拘るのでは無く、人に拘りが必要である」という持論を掲げ、これから出会うすべての人へ思いやりのある提案を作り上げている。
WebサイトURL:http://www.d-direct.co.jp/
起業家に影響を与えたこの一冊は、イノベーションズアイ会員企業を対象に取材しています。