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株式会社アトミックドロップ 代表取締役社長 中川 知則さん

『世界のマーク・シンボル+CI』

著者:桑山 弥三郎(編集)

世界のマーク・シンボル+CI

29才の時、そこそこ有名なコンピュータ会社を退職しました。

営業企画部に所属していた当時は、毎年、数字の積み重ねの連続で、いつまでこの作業が続くのか・・・、平日の朝のけだるさから解放されたい気持ちが先行した結果そうなりました。

前職の経験から、数字のように書き換われてしまう仕事ではなく、形や記憶に残る仕事をしたいと思い、そのとき出会ったのがこの本です。

生活が苦しかった頃に、16,500円もの本を購入するには、かなり勇気が必要でしたが、多少の英語力があればトレードマークシンボルという世界共通のデザイン方程式を知ることができるという魅力に行動を止められませんでした。

私の好きな例として「日本航空株式会社」の鶴丸のロゴがあります。

日本の赤丸、日本の象徴である鶴、空に羽ばたく姿・・・なんとも美しく説得力のあるロゴではないでしょうか。

このように、CI(コーポレート・アイデンティティ)デザインには、色や形に企業そのものの思いが詰まっている。「想いを形にする」その一心で、美術大学出身でもなく、デザインの心得もない私がデザイン会社を設立したきっかけとなりました。

手前味噌になりますが、会社名にアトミックドロップという訳のわからない社名を付けたかというと、1998年の設立当初はISDN64bitがネットワーク最速の時代で、インターネットが使えるのはごく一部、営業は全て電話から始まっていました。今や過去の産物となった、タウンページという黄色い表紙の分厚い電話帳を開き、該当する会社に電話し依頼するという原始的な方法しかありませんでした。そこで早く見つけてもらうために「A」と「あ」で始まる社名が欲しかったのです。

あとは一回で覚えてもらえるようなインパクトのある名前であればOKという発想で試行錯誤の結果「アトミックドロップ」というプロレス技の名となりました。

A、あ、で始まる名前→アトミックドロップ→プロレスの技(尾骶骨割り)→当時プロレスはゴールデンタイムに放映→記憶

結果、日本語に直すと「株式会社尾骶骨割り」というコミカルな名前のおかげで、一発で名前を覚えてもらい商談に繋がった事も多々ありました。

本に掲載されているCIに比べると何とも陳腐な方程式ではありますが、23年目を迎えることができたという事で良し! としたいです。

昨日まで書棚に埋もれていた本を、改めて手に取る事により少しだけ初心に戻れた気がします。グラフィックデザインから始まった会社は、Web制作会社に変貌してしまいましたが、これからも、デザインに理由を求め、記憶に残る仕事を続けていきたいと思います。

少し横道に逸れてしまいましたが、私にデザインの面白さと起業への一歩を導いてくれた本です。

起業家プロフィール

株式会社アトミックドロップ 代表取締役社長 中川 知則

コンピューターメーカー、出版社に勤務し、営業企画と宣伝広告を学ぶ。
1998年グラフィック、DTP、Web制作を行うデザイン会社 アトミックドロップ設立し現在に至る。

WebサイトURL:https://www.a-drop.com/

代表取締役社長 中川 知則

起業家に影響を与えたこの一冊は、イノベーションズアイ会員企業を対象に取材しています。