公開日:2020年12月11日
株式会社 彩花 石田 学さん
『モモ』
著者:ミヒャエル・エンデこの本は、新型コロナウイルスが国内で発生し外出を自粛するなか、久しぶりにファンタジー小説が読みたくなり、表紙に描かれた時計の絵に魅かれて直感的に購入しました。
この物語には「灰色の男たち」という、街の人々の“時間を盗む”悪党が出てきます。
灰色の男たちは言葉巧みに街の人々を騙し、人々の「想い」を削ることで、作業などの「時間」を切り詰めさせて、その「時間」盗みます。街の人々は時間に追われ、次第に人間関係がギスギスしていきます。
時間を奪われることで心にゆとりがなくなり、人に対する思いやりがなくなっていく。
この本を読んで浮かんだ情景は、残念ながら現代社会に通じるものでした。
さて、新型コロナウイルスの影響によって在宅の時間が増えるなか、今の仕事や時間の使い方など、改めて自分自身と向き合っている人は少なくないと思います。
私は人々の“心の温度を1℃上げる”ことをコンセプトに花屋を経営しています。収益のことだけを考えたら、「想い」を削って、もっとシステマティックに経営した方が良いと多くの方々は言われるかもしれません。しかし、私がこの本を読んで改めて強く感じたことは、ひとりひとりの大切な「想い」をくみ取り、その「想い」を表現して届け、心がじんわりと温まることに時間を使いたい、それをきちんとした商いにしたい、それが与えられた有限な時間の中で、私が本当にやりたいことだということでした。
この物語のタイトルにもなっている、主人公の「モモ」という少女は、「話を聴く」能力に長けていて、モモと話をした人たちは、すっきりして晴れやかな気持ちになって帰っていきます。当店も、人々のその時々の「想い」やエピソードを聴かせていただき、お花をアレンジする、言葉を紡ぐという形で表現をします。そのお花や言葉を届けることで、贈った人と贈られた人、双方に喜んでもらえ、心が“ほわっと”温まるというのが、物語とリンクしていて嬉しく感じました。
私の今後の仕事のやり方、生き方にとびっきり素敵なヒントを与えてくれた本です。
起業家プロフィール
株式会社 彩花 石田 学
1997年に大学を卒業後、会計事務所にて約15年間勤務する。
2011年5月の母の日に、東日本大震災の被災地にカーネーションを1000本届けるために仲間と共に訪れ、そこでの体験から、花の存在そのもの、花の持つエネルギーに魅了される。
2014年10月に「花処 彩花」を立ち上げ、現在に至る。
WebサイトURL:http://bihana-saika.co.jp/
起業家に影響を与えたこの一冊は、イノベーションズアイ会員企業を対象に取材しています。